フードの中
「チェシャ猫はそんなに深くフード被ってて、ちゃんと前見えてるの?」
「見えてるよ」
「じゃあそのフード、中からは透けて見えてるの?」
「透けてないよ」
「じゃあ見えないじゃない!」
「でも見えるんだよ」
「ふーん…」
アリスは納得出来なさそうに首を傾げた。
だっておかしいじゃない。あんなに目深にフード被ってるのにちゃんと前が見えてるだなんて!でも確かに、何か障害物にぶつかる訳でもないし…。
「もしかして赤外線を感知してるとか」
「セキガイセン?」
「…何でもないわ…」
まぁいいや…不思議の国の住人は理屈が通らない人(かどうかも疑わしい)ばっかりだもの。チェシャ猫が見えるっていうんだから見えてるんだろう。
「あ、でもずっとフード被ってて暑くないの?特に今なんか夏だし…」
蒸れたりしない?
と聞くと、予想外に、
「暑いよ」
と肯定の言葉が返ってきた。
「暑いなら脱げばいいじゃない…」
「暑くても被ってなきゃいけないんだ」
「何で?」
「フードを被ってないと、見えないものもあるからね」
ぱちっ。
不意にチェシャ猫の笑みが深くなった気がして、アリスは瞬きした。
何だろう…チェシャ猫には何が見えてるんだろう。気になる!
「時間くんとか!?」
「まぁ、それも一つかもね」
でも時間くんももとはアリスが作ったんだから見えない方が不思議なんだけどね、とチェシャ猫は付け加えた。
「むぅ…じゃあ何が見えてるのよ」
「その内教えてあげるよ」
チェシャ猫は更に笑みを深くした。
真実の箱まで、あと少し。
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チェシャ猫には、多分亜莉子のお腹の傷とか最初から見えてると思います。っていう妄想。