loop
部屋に戻ると、留が部屋の隅っこで体を丸めて子供みたいに泣いていた。そんな光景はずいぶんと久し振りで、ぼくは少し驚いた。
同時に申し訳なくも思う。どうしてこんな日に限って委員会は薬箪笥も倒れず、下級生の調合間違いも起こらず平和に終わるのだろう。彼は一人で泣きたかっただろうに。
そしてそれはきっと彼も同じ思いに違いない。彼は優しいから。ぼくに気を遣わせて悪いなぁとか、やっぱり外に行けばよかったかなぁとか、泣くほど自分で手一杯になっているにも関わらずそういうことを思っているに違いないのだ。
ぼくが、彼の大事な人なら一人で泣かせたりしないのに。飛んでいって抱きしめて頭を撫でて全部話を聞いて、泣かせたのなら謝って仲直りして一つキスを落としてあげる。
ねぇ、不器用なあの男はそんなことも出来ないのでしょう。
ぼくはせいぜい留の背中を遠慮がちにさすって、「すまない」と鳴咽混じりに謝る彼にいつもの笑顔を返すことしか出来ないのだ。
(ぼくが君の大事な人なら、君は決してぼくに泣き顔を見せたりはしないのだろうけど)
.