マシンガントーク




斉藤タカ丸という男は良く喋る。

休み時間も、食事中も、風呂の時も、こっちが何をしてようとお構いなしだ。
喋らないのは授業中と睡眠中くらい。
今だって、ほら。
彼が「滝の髪の毛カットさせてよ」と頼むので、少し伸びて来た所だし丁度良いと思いカットして貰っているが、その間も彼はずっと喋り続けている。
手を動かしながら良くそんなに喋れるものだ。口から先に生まれて来たどころか、口だけ別の生き物なんじゃないだろうか。
シャワーのように、上から絶え間なく降り注ぐ声。
何故か少し心地良い。

「…滝?聞いてる?」

気付けばウトウトしていたようで。彼が私を覗き込んでいた。

「すみません、」
「いやいや。滝はいつも遅くまで勉強頑張ってるもんね」
「そんなことは…」

偉いねー、なんて間延びした声で言われるのでこちらまで気が抜ける。大体同輩から褒められる事自体あまりないので、何だか擽ったい。

「タカ丸さんは良く話のネタが尽きないもんですね」
「髪結いしてたらお客さんと良く喋るからさー。自然にお喋りになっちゃった」

それって忍者には向かない性格なんじゃ…と思ったが黙っておく。

「でもさ、滝夜叉丸は髪の毛長いのにホントに綺麗だよね。量も多いし、いじりがいがあるって言うか。俺なんかあんまり綺麗じゃないからさー、羨ましいなー。俺はほら、こうやって染めてるけど滝は絶対染めない方がいいよー。染めると傷んじゃうし、折角の黒髪だし。俺もそろそろ金髪飽きて来たし、違う色にしようかなー。髪の色もお洒落の一つだよね!あ、でも金髪の滝とかも見てみたいかも!そう言えば今更だけどここって染めるのオッケーなの?まぁいっか、今んとこ先生方には何も言われてないし。滝もさ、髪型変えたい時は俺に言ってね。いつも同じ髪型ばっかりしてたらハゲちゃうらしいよー。俺もここ入ってからずっと同じ結い方してるから、最近ちょっと変えてみようかと思ってるんだー」

…本当に、ペラペラと後から後から話が出てくるものだ。
などと感心しながらも、心地良く話を聞いていたのだが。
次の言葉で私はピタッと固まる。

「あ、そう言えば六年生に立花仙蔵さんっているよね?あの人もすごい髪の毛綺麗だよねぇー。言ったら触らせてくれるかな?滝、あの人と知り合い?もし知り合いだったらさ」
「知りません」

ばしっと叩き付けるように言う私に、彼は眼をぱちくりさせた。
どうして私が急にヘソを曲げたのか分からない様子だ。たくさんの人を見て来た癖に鈍感な男。

「え、滝怒ってる?」
「別に」
「怒ってるじゃん!何で何で?」
「知りたいですか」

そう言って私が彼を見上げると、彼もつられて私を覗き込むので、眼の前にぶら下がった明るい髪の一房をぐいっと引っ付かんで唇を合わせた。

「こういうことです」

ニコ、と笑ってやると彼は顔を真っ赤にして声も出ない様子。
遊び人風だと思っていたけど、意外とそうじゃないんだろうか。
私は益々笑みを深くした。
こんな彼は私だけが知っていればいい。



(お喋りな恋人を黙らせる方法)