さんかく




両方の耳で違う言葉が聞ければ良いのに。

そうしたら僕は右の耳で雷蔵の言葉を聞き、左の耳で三郎の言葉を聞く。
二人はいつも一緒にいるからどちらか一人の話だけを聞く訳にいかないだろう?

「兵助は謙虚そうに見えて割と欲深いね」
「そうかな」
「そうだよ。人間の限界を越えたいって言うんだから」
「三郎、欲深いなんて失礼じゃない?せめて夢見がちでしょ」
「どっちもどっちだよ…」

俺は盛大にため息をついた。
やっぱりこの二人は似ている。別々の事を言っているようで実は二人とも同じように毒舌な所とか。
でもこいつらはベクトルが同じだからさ、俺が入って丁度良いんだ、きっと。

俺は雷蔵と三郎の手を繋がせ、余った片方の手を俺の両手と繋いだ。

「さんかくになっても良いかなぁ?」

雷蔵と三郎は顔を見合わすと、同時に俺の方を向き同じ顔で笑った。



「「もちろん」」