それは、まるで




「七松せんぱーい」
「私たち、滝夜叉丸先輩の自慢話にはホント飽き飽きしてるんですよー」
「七松先輩からも何か言ってやってくれませんか?」
「さっきもそこで捕まって散々長話聞かされて」

そう言って小平太に群がっているのは乱きりしんの3人組。
小平太は「えー?」と首を傾げる。

「滝が自慢話ぃ?聞いた事ないけど…」

今度は3人組が首を傾げる番だ。
さすがの滝夜叉丸先輩も年上には自慢話をしないのだろうか?いやいや、先生たちにはすっごい自分を売り込んでるじゃん。じゃあ七松先輩が人の話を聞いてないだけなんじゃ…。あぁ、そうなんじゃない?先輩はいつもいけいけどんどんだもんね。
等と遠慮のないひそひそ話をしていると、当の滝夜叉丸がてくてくと現れた。
露骨に嫌な顔をする3人組。
が、滝夜叉丸は3人組など全く眼に入らない様子で、小平太の前まで来ると「こここ、こんにちは」と若干どもりながら角張ったお辞儀をした。

「や、滝!」

小平太は片手を上げにっこり笑う。
すると、滝夜叉丸は瞬間沸騰したようにぼん!と真っ赤に変わった。

「こ、ここんにちは!」
「あはは、滝、挨拶二回目だよー」
「そ、そうですか?良い天気ですね!」
「…滝は雨が好きなの?」
「あ、いえ、その、」

……これが本当にあの滝夜叉丸だろうか。
頬を染めて俯くさまは、好きな人の前で緊張して上手く喋れない恋する乙女そのものである。
自慢話なんて聞いた事ないわけだ。

更に二言三言支離滅裂な会話を交わしたあと、それじゃあ私は戦輪の練習がありますのでみたいな事をもごもごと言って滝夜叉丸は立ち去った。
何だか見てはいけないものを見たようで、居たたまれなくなる。

「滝っていつもあんな感じなんだ。シャイだよねぇ」

暢気に笑う小平太の鈍感具合に感心すると共に、ちょっぴり滝夜叉丸に同情する3人組だった。