満ち欠け




内臓が暴れている。

いや、実際暴れていたらこんなものでは済まないのだろうが、それでも滝夜叉丸はこの鈍痛をそう感じた。
吐き気、ではないのだけど何となく圧迫された感じで気分が悪い。何が住んでるの私の子宮。いきもの?気持ち悪い。
理解は出来る、これは人間が生きていく為に必要なものなのだ。でも一月に一回もいらない。せいぜい半年か、一年に一回でも良いくらいだ。

痛みがなければそう煩わしいものでもないのだろうか。

滝夜叉丸は横に座って看病してくれる綾部をちらりと見遣った。
綾部とはずっと同室なので、周期もほぼ同じである筈だ。でも綾部が自分のように寝込む程の痛みを訴えたことはない。

「滝ちゃん、顔色悪いよ」

そう言って布を水に浸し絞ったのを額に乗せてくれた。ひんやりと気持ちいい。滝夜叉丸はほぅ、と息を吐いた。

「綾部は、いたくないの…?」

おなか、と聞くと綾部は少し考えて「全然」と答えた。

「そっか…いいなぁ…」
「でも何か図太いみたいで嫌」
「それは贅沢な悩みだ」
「そうかな」

綾部は首を傾げる。その様子がかわいらしいので滝夜叉丸はクスリと笑った。確かに綾部は痛みとは無縁そうだ。何だかほわほわしてるんだもの。


「滝ちゃんの痛みなら共有したいのに」


そう言って、ぎゅっと滝夜叉丸の手を握る。綾部の手は温かかった。何故だろう、何だか少し泣きたくなった。