派手な奴。
それが自分の第一印象であることをタカ丸はよく自覚していた。
理由は自分の金色の頭髪。タカ丸は紛れも無く生粋の日本人である。どこを見渡しても自分と同じ髪色の人などいない。町に住んでいてさえそうなのだから、どちらかと言えば閉鎖的な忍術学園においては尚更だ。案の定、黒ばかりの頭の中で自分の金色は殊更に際だった。

編入生の自分に学園の案内をしてくれたのは滝夜叉丸という少年だった。彼の説明には無駄がなく理路整然としていて、タカ丸は感嘆すると同時に驚きもした。とても齢十三とは思えぬ理知的さ。おおよそ少年らしくない。この学園にいる子たちは皆こうなのだろうか。

学園を一通り案内し終わると、彼は最後に長屋の一部屋に通してくれ、「今日からタカ丸さんの部屋はここです。」と告げた。既に他の人が使っている部屋のようだ。朝急いでいたのだろうか、数冊の本が開いたまま机に放置されていた。

「他に分からないことが有れば同室の田村三木ヱ門に聞いて下さい」
「分かった。ありがとう」

同室の子は田村三木ヱ門と言うのか。早く会いたいな。そう思いながら荷物を片付けようと包みを広げると、滝夜叉丸が躊躇いがちに口を開いた。

「…タカ丸さん、のその髪は…」
「自分で染めたの。似合うでしょ?」
「すごい。こんなに綺麗に色を変えられるなんて…」
「金色だけじゃない。滝夜叉丸の好きな何色にでも変えられるよ」
「本当ですか!」
「本当だよ。赤、青、黄、緑、紫、灰、桃色にだって出来る。滝夜叉丸も髪色を変えたかったら俺に言ってよ。いつでも染めてあげる」
「約束ですよ!」

そう言って自分を見上げる滝夜叉丸の眼はキラキラと輝いていた。
さっき彼を「子供らしくない」と評したことを撤回しなければ。
喜ぶ彼の背中で、きれいに手入れされた真っすぐな髪が揺れる。その黒を、ふと七色に染め上げたいと思った。