真昼の月




「綾部。見つけた」


にかー、と音がしそうな笑顔で私を覗き込むのは斉藤タカ丸というひと。
この間忍術学園に編入して来たばかりなのだが、何だか気に入られてしまったらしく四六時中私にひっついて来るのだ。
別に彼が嫌いではないが、私だって一人の時間は必要である。寧ろ人より多く欲しいくらいだ。
という訳で今日は早々にお昼を食べたあと遥々校庭の端っこの木の下まで来てお昼寝しようと思ったのに、あっさり見つかってしまった。

「良く分かりましたね…」
「俺には綾部センサーがついてるの」
「どうせ滝ちゃんに聞いたんでしょう」
「滝夜叉丸は教えてくれなかったんだよ」
「そうですか」
「だから本当にセンサーなんだって!俺、綾部がここに居そうって思ったんだ」

そしたらほんとに居たんだ~、あ、ここ一緒に寝転んでいい?と言いながらもう隣に寝転んでいる。私は諦めて空を見上げた。きらきら、木漏れ日が優しく射し込んでくる。いつもなら一人なのに。今日は隣にひとがいる。それだけで、あの木の葉と同じようにざわざわと心が音を立てる。

「あやべ、」

呼ばれてそちらにごろんと身体を向けると、タカ丸さんはもう既に眼がとろんとしていた。向かい合って寝転がるのが気恥ずかしくてもう一度上を向こうとしたが、その前にタカ丸さんの手がすっと伸びて来て私の髪を捉えた。

「あやべ、すきだよ」


おやすみ。


それだけ言って、勝手に先に寝息を立て始める。
残された私は眠れるはずもない。


(ずるいひとだ)


風が、少し紅潮した頬をするりと撫でた。