依存症




眠れなくなったのはいつからだろう。

最初は夢に魘れた。
次は寝付きが悪くなった。
その内眠ることを放棄し始めた。
人間だから全く眠らない訳にはいかないので、一日に二、三時間だけ意識を飛ばす。眠るより気を失うと言った方が正しいだろう。何でだろう、学園にいた時はこんな事なかったのに。それも日を経るにつれ酷くなるようで、夜一睡も出来なくなってから、昼日中往来を歩いている時や家で読書している時もお構いなしに気絶するようになり、このままではいつ仕事中に倒れるか分からない。こんな状態では仕事も出来ず、ここ数日はずっと家に篭りきりだった。家でひたすら寝転んでいても睡魔は訪れない。古い友人の伊作のもとを尋ね、症状を話してみるも首を振るばかりで何の解決にもならなかった。

家に着き、無駄に歩かせた身体を休めるもやはり眠れそうにはなかった。伊作の家までは遠くて随分疲れているのに。寝たいのに。もう随分と寝ていない。
寝ていない。
そう気付いて、慄然とし身を起こす。
自分はもう何日寝ていないだろうか。最後に意識が戻った時から何日経った?少なくとも家に篭るようになってからは一度も眠っていない。
自分が衰弱していっているのは明らかだった。このまま眠れずに死んでいくのだろうか。今日こそは眠れるかもしれないと僅かな期待を胸に夜布団に潜り、絶望の朝を迎える。繰り返し。もう飽きた。
そうして今日も頭から布団を被る。
お休み。
呟いたとて眠れないのは自分が一番よく知っている。