金属疲労




手の中の戦輪にふと違和感を感じ、まじまじと見つめたら小さな皹を見つけた。

(金属でも、割れるんだ)

ずっと使って来たし何回も磨いてやった、愛着のある戦輪。やはりもう元には戻らないだろうか、なんて未練がましく思案していたら、後ろから声を掛けられた。

「滝。何してるの?」
「七松先輩」

振り向くと、同じ委員会でもある七松先輩がいつもの笑顔で立っている。

「気付かないなんて滝らしくないね」
「戦輪が…」
「ん?」

先輩は私の掌を覗き込むと、「ああ、割れちゃったんだ」と言った。

「金属疲労だねー。滝はいつも一生懸命練習してるもんね」
「金属、疲労」

偉い偉い、とわしゃわしゃ頭を撫でられる。先輩のいつもの癖だ。
金属疲労。
金属疲労。
心の中で、ゆっくり言葉を反芻した。
ああ、そうか。

「…金属でも疲れるんですね。」

七松先輩は私の頭をぐしゃぐしゃにするのをやめ、じっと見つめた。私はその目を見つめ返す。


「愛おしい、です」


先輩はにっこり笑った。
彼も、きっと同じ経験をしたんだろうと思った。