息することさえ忘れたひと




留が最近、笑わない。
悲しいことだが忍術学園の六年生ともなれば純粋に笑うことは難しいのだ。お互いに腹を探り合う癖がついている。その点小平太の明るさには救われる思いだ。

最初は実習で疲れているのかな、とかもうすぐ卒業だし色々考えることがあるのだろうとか思っていたが、どうもそうではないらしい。と言うのも僕は明らかに避けられているからだ。
今まで六年間それなりに仲良くやってきた、こんなことは今までなかった。寂しいじゃないか。悲しいじゃないか。

「留!」
「…伊作」
「今日ははぐらかさないでよ。どうして今になって僕を避けるんだい?もうすぐ卒業じゃないか、例えそれから進む道が別れたってそれまでは仲良くしたいよ」
「…すまない。お前は悪くないんだ、俺が、俺は、俺はおかしいんだ」
「何がおかしいんだよ」

「お前を見ると動悸がするし、熱が出たみたいに身体が照てるし、心臓が痛くなって息も出来ない」

「…それは」



(恋の病じゃないの?)