雪化粧
その澄ました顔が嫌いだ。
いつだってプライドを最優先させて、誰かに負けることが最大の恥だと思っている。そのため努力だけは惜しまない。私と会うために時間を割くより、その時間を自分を磨くために使う方が有意義だと信じて疑わない。つまるところ己が最優先事項なのだろう。そういうやつだと知っていて好きになったのは私だが、そういつも素っ気ない態度を取られていてはこちらも腹が立つ。私は負けず嫌いなのだ。
お前のその白い顔が悋気に歪むところが見たい。
「三木ヱ門」
「何だ」
「…噂を、聞いた」
「何の」
「お前の」
「どんな?」
「……」
滝夜叉丸は言い淀んだ。
彼が言いたいことは分かっている。私が自分で仕組んだことだ。田村三木ヱ門は平滝夜叉丸がいながら他の奴と付き合っていると、口さがない奴らが話に尾鰭を付けながら吹聴してくれているだろう。
彼はそれを聞きつけ、私のところへ確かめに来たのだ。
だがいざ聞こうとすると、こうして迷う。分かっている。執着しているようで嫌なのだろう。みっともない自分が嫌なのだろう。口に出すのはそれを認めることになるから迷うのだろう。分かっている。
私は口元が上がりそうになるのを必死に抑えた。何としても彼の口から言わせたい。その綺麗な仮面を溶かして、静かに蠢く泥々の素顔を見せてくれよ。
嫉妬している、と。
(認めろ!)
.