温度差
小さな手が、私の身体を遠慮なく探る。
あれ、乱太郎、いないの。
そう言って医務室に入ってきた少年は、寝ている私を見てどうしたの先輩と心底心配そうに聞いてきた。そんなに心配されるような間柄だったかと少し疑問に感じたが、幼い子供にそんな顔をさせるのは無条件に心が痛むものだ。私は頭をくしゃりと撫でてやり、心配するな、微熱があるだけだと答えた。
すると彼は私の額に手を当て、ほんとだ、熱い、と呟いた。
それから頬に手を当てたり、手を握ったり、しまいには一緒に寝転がってぎゅっとひっついてきた。私は黙って彼の好きにさせていた。何故そうしたかは分からない。他人に触れられるのを好まない私が。同級生にも不必要に触られたくないのに、よりによってこんな子供に好きにさせているなんて。子供と言うのは遠慮を知らない。私は無遠慮に自分の領域に侵入されるのを何より嫌う、だから子供が嫌いなのだ。
それなのに何故この子供を不快と感じないのだろう。
先輩、早く元気になってね。
彼は私よりよっぽど元気のない声で囁いた。私はこんな熱くらいすぐ下がるよ、と笑ってみせた。
そうすると彼は安心したようにしまりのない顔で笑い、そのまま暫く私にひっついていたがやがて静かに寝息を立て始めた。
寝返りをうち布団から転がり出た彼を引き戻そうとして、彼の手が冷えていることに気付いた。
さっきは熱があるせいでそう感じるのかと思ったが、この年頃の子供は普段の体温も高いし寝ている時はもっと温かいだろう。
(ああ、そうか)
この、子供らしからぬ温度の低い手を心地良いと感じたのか。
納得がいって一人満足した私は、今度は自分から彼と指を絡める。
やはり冷たくて気持ちがいい。
彼が冷やしてくれた血液が、脳をすっきりと透明にしてくれるような気がした。
それとは対照的に、瞼はゆっくりと重くなる。私は逆らわず目を閉じた。
目覚めたらきっと熱も下がっているだろうから。
(おやすみ)
.