メルティ・キス


唇に、閉じた眼の瞼に、ちゅ、ちゅ、とキスが降る。城之内は気持ちいいなぁととろとろして眠気すら覚え、壁に背を預ける。獏良のキスは優しい。頬や頭を撫でる手も優しくて、自分とあまり背とかは変わらないのに、何故こんなに包容力があるのだろうといつも城之内は思う。

「城之内くん、寝ないでよ」
「ね、寝てねーよ」

クスッと笑って獏良が顔を覗き込む。城之内は見透かされたようでバツが悪く、目元を赤くして顔を逸らした。
獏良は城之内の頬に手を添えると、もう一度口づけて今度は舌を差し込んだ。それを甘受し、こちらからも絡ませてやるとすぐにぴちゃりと水音が響く。そうするとさすがに眠気も飛び、身体が熱くなってきた。
の、だが。

「……」
「どうしたの、城之内くん」
「獏良、お前、何か今日味違う」
「あじぃ?」
「苦い…あ、煙草!煙草だ!」
「タバコ?」

吸った覚えはないのに、と着ているTシャツの匂いを確かめると、成る程少し煙の匂いがついている。

「あー…また人の体使って勝手に…」
「バクラの方か?」
「うん」
「肺ガンになるぞって言っとけよ」
「ふふ、伝えとくよ」

獏良はにっこり笑うとじゃあ先にシャワー浴びようか、と言って立ち上がった。

「そんな気ィ使わなくていいのに」
「僕がそうしたいんだから気にしなくて良いんだよ」
「お前、俺に甘すぎじゃね?」
「そう?」
「そう!俺がこうしたいって言ったら何でも聞いてくれるし、何か選ぶ時とかいつも好きな方選ばせてくれるしさぁ」
「僕は城之内くんをトコトン甘やかしたいんだよ」

だって、きみはやさしくされるのに慣れてないでしょう。そんなきみがとても愛しくて仕方ないんだもの。

「最終的には僕なしじゃ歩けもしないくらい骨抜きにしたいな」
「えぇ、俺そんなの嫌だぜー」
「分かってるよ。それくらいの気持ちってコト」
「よく分からんが獏良が俺に優しいってのはよく分かった」
「うむ、なら良し」

ところでどうせだからお風呂一緒に入る?と聞いてやると彼はまた赤くなってうー、とかあー、とか唸るものだから答えは出ているくせに、と思って獏良はこそりと笑った。



(その意地を、どろどろに溶かしてあげる)