赤の脅威
「ごめんな、遊戯」
城之内は俯いて呟くと、遊戯の切れて血がうっすら滲む頬に絆創膏を貼った。
「大丈夫だよこんなの。城之内くんの方がよっぽどひどい怪我じゃん」
今は落ち着いたとは言え、中学時代に散々暴れ回っていた城之内は色んな奴に怨みを買っているらしく、今でも時々こうやって喧嘩を売られる。今日はたまたま一緒にいた遊戯まで巻き添えを喰らってしまった。
「なぁ遊戯。血って怖ぇな」
「…城之内くんがそんなこと言うなんて意外だね」
「はは、だろうな。俺もさ、自分のとか今日ボコボコにしてやった奴らとかそんなのは怖くねーよ。でもお前が怪我したのは怖かった。許せなかった。俺が今まで殴って来た奴らにもきっとそう思う人がいて、そいつらにきっと俺も許せねぇと思われてんだろーな。なぁ、俺、馬鹿だな。全部なかったことにしたい。無理だって分かってるけどさ。ほんと、馬鹿だよな、俺」
「…なかったことには出来ないけどさ」
「うん」
「過去になるまで付き合うよ」
「…うん」
彼はありがとう、と言うのにとても努力したようだった。遊戯は笑った。